建設業界は過酷な労働環境や高い身体的負荷が伴うため、労働者のメンタルヘルスに深刻な影響を与えることがあります。長時間労働や厳しい作業条件、安全へのプレッシャーなどがストレスの要因となり、それが積み重なると精神的な健康を損なうリスクが高まります。
メンタルヘルス対策を怠ると、労働者の心身に深刻な影響を及ぼし、生産性の低下や事故の増加、さらには離職率の上昇といった問題を引き起こす可能性があります。
この記事では、建設業におけるメンタルヘルス対策の重要性や、現場で実施するべき主な取り組みについて詳しく解説します。労働者の健康と安全を守り、健全な作業環境を維持するための具体的な方法を見ていきましょう。
メンタルヘルス対策とは?
労働者の心の健康を維持し、ストレスや精神的な問題から保護するための一連の取り組みを指します。その対策には、労働環境の改善、ストレス管理、心理的支援、そして教育や啓発活動などが含まれます。具体的には、労働者がストレスを感じる要因を特定し、それに対処するための方策を講じることです。
労働環境の改善では、過重労働の防止や休憩の確保、働きやすい職場環境の整備が求められます。ストレス管理の一環として、定期的なストレスチェックを実施し、個々の労働者が抱える問題を早期に発見して対応することも重要です。心理的支援としては、カウンセリングの提供や、メンタルヘルスに関する相談窓口の設置が効果的です。
また、メンタルヘルスに関する教育や啓発活動も欠かせません。労働者自身がストレスの兆候を理解し、適切に対処するための知識を持つことが重要です。それには、研修やセミナーを通じて、メンタルヘルスの重要性やストレス管理の方法について学ぶ機会を提供することが含まれます。
メンタルヘルス対策は、労働者の健康と生産性を維持し、職場全体の健全な雰囲気を作り出すために欠かせない取り組みです。
建設業でのメンタルヘルス対策の重要性
建設現場は厳しい労働環境や高い身体的負荷が伴い、ストレスや精神的な疲労が蓄積しやすい職場です。そのような環境でメンタルヘルス対策を怠ると、労働者の心身に深刻な影響を与えるリスクが高まります。
メンタルが悪化すると、うつ病や不安障害などの精神疾患が発生しやすくなり、労働者の生活の質が大幅に低下します。また、精神的な問題が原因で身体的な健康にも悪影響が及び、慢性的な疲労や体調不良を引き起こすことがあります。
メンタルヘルス対策は職場の安全性を維持するためにも重要です。建設業では高所作業や重機の操作など、注意力や判断力が求められる場面が多く、精神的な健康が損なわれると事故のリスクが増大します。ストレスや精神的な疲労が蓄積すると、注意力散漫や判断ミスが生じやすくなり、重大な労働災害を引き起こす可能性が高まります。
メンタルヘルス対策を怠ると、労働者の離職率が上昇し、人材の定着が難しくなるという側面もあります。建設業界は慢性的な人手不足に悩まされており、貴重な労働力を失うことは企業にとって大きな損失です。メンタルヘルス対策を講じることで、労働者の満足度と職場への定着率を高めることができます。
したがって、建設業においてメンタルヘルス対策は不可欠です。労働者一人ひとりの健康を守り、安全で生産的な職場環境を維持するために、メンタルヘルス対策を徹底することが求められます。
建設業のメンタルヘルス対策
建設業におけるメンタルヘルス対策として、建設業労働災害防止協会が推奨している以下の3つを紹介します。
健康KY
作業前に責任者が現地で行うKY(危険予知)活動に、健康状態の確認を組み合わせたものです。
まず、作業前に実施する現地KYにおいて、責任者は各作業員に対して、以下の3つの問いかけを行います。
- よく眠れたか?
- 美味しくご飯を食べたか?
- 体調は良いか?
以上の質問をし、その際の作業員の姿勢や表情などを観察することで、健康状態を把握します。
健康KYを通じて、作業員の体調に心配な点が見つかった場合、責任者はその情報を作業所長等へ報告します。報告を受けた作業所長等は、相談機関などへ連絡するかどうかを判断しますが、その前により詳しい健康状態を確認するために「睡眠スコア」を実施します。
「睡眠スコア」は、作業員の睡眠状態を評価するもので、総点数が3点以上の場合、その作業員が所属する事業場へ連絡するか、適切な相談機関を紹介します。一方、総点数が3点未満の場合は、しばらく様子を見ることになります。
【睡眠スコア】
- 寝つくまでに30分以上かかることが、時々ある。
- 毎日のように、寝つきが悪い。
- 夜中に目が覚めることがあるが、再び寝つける。
- 夜中に目が覚め、寝床を離れることが多い。
- 普段より早朝に目が覚めるが、もう一度寝る。
- 普段より早めに目が覚め、そのまま起きていることが多い。
- これらの質問に対し、以下の評価方法で点数を加算します。
あてはまる項目が1, 3, 5の場合は各1点。
あてはまる項目が2, 4, 6の場合は各2点。
該当なしの場合は0点。
〈評価法〉
総点が0~2点の場合は問題ありません。
総点が3点以上の場合は、さらに詳しい面接が必要です。不眠の原因やストレス状況、体調や気分の不調についての面接を行い、必要な対応を検討します。
無記名ストレスチェック
労働者のプライバシーを保護しながら、ストレスレベルを正確に把握するための取り組みです。ストレスチェックの目的は、労働者が日常的に感じているストレスや精神的な負担を評価し、早期に問題を発見して適切な対策を講じることにあります。
無記名で行うことで、労働者は安心して正直に回答できるため、ストレスの実態をより正確に反映したデータを収集することが可能です。集計されたデータは、個々の労働者だけでなく、集団としてのストレス傾向を把握するために使用されます。
それにより、特定の現場や作業環境におけるストレス要因を特定し、適切な改善策を講じることができます。
現場の職場環境改善
職場環境改善活動の計画段階では、無記名ストレスチェックの集団分析結果と、事前に作業所長および責任者から回答を得た職場環境改善チェックリストの結果を基に、職場環境改善シート(RA方式)を作成します。
職場環境改善シート(RA方式)の詳細はこちら
このシートは、建設工事従事者に広く浸透しているリスクアセスメント手法を取り入れており、ストレス判定図によって測定される4つのストレス要因(仕事の量的負担、仕事のコントロール、上司および同僚の支援)と関連する30のチェック項目について、「該当の程度」と「影響度」の観点からリスク評価を行います。
そして、リスク得点の高いチェック項目を優先的に改善する具体的な取組み(リスク低減措置)を決定します。
次に、職場環境改善活動の実施段階では、作成した職場環境改善シート(RA方式)の結果に沿って、現場で具体的な改善策を講じます。これは、リスク得点の高い項目に対して優先的に改善措置を実施することで、職場環境の改善を図るものです。
最後に、職場環境改善活動の評価段階では、改善計画の終結時に再度無記名ストレスチェックを実施します。これにより、実施した改善策の効果を評価し、次の新たな取り組みへと繋げていきます。
その一連のプロセスはPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)として継続的に行い、職場環境の改善を図り続けます。
参考:
建設現場のメンタルヘルスと職場環境改善 | 厚生労働省
建設業のメンタルヘルス対策相談窓口
建設業のメンタルヘルス対策に関する無料相談窓口が建設業労働災害防止協会によって設けられています。
その相談窓口は、建設事業者や作業所長を対象にしており、メンタルヘルス対策に関するさまざまなサポートを受けられます。
毎週月曜日の13:00から16:00まで受付、祝日や年末年始を除いて運営されています。相談料は無料ですが、通話料は利用者負担となります。
事業場でメンタルヘルス対策を導入したいと考えている方や、現場での対策をどのように進めれば良いか悩んでいる場合に、具体的なアドバイスをもらえます。
また、「建災防方式健康KYと無記名ストレスチェック」などの具体的な対策についても説明してもらえます。ただし、個別の労働者の相談には対応していませんので注意が必要です。
相談時間は1人あたり30分までとされており、利用者は専用ダイヤル(03-3453-0974)に電話をかけて相談します。
相談窓口の詳細はこちら
建設業でのメンタルヘルス対策は必須
建設業におけるメンタルヘルス対策は、労働者の健康と職場の安全を保つために重要です。厳しい労働環境でのストレスは、精神疾患や生産性の低下、事故の増加、離職率の上昇を引き起こす可能性があります。
主な取り組みに関しては、今回紹介した建設業労働災害防止協会が推奨している方法が適切です。それらの対策により、早期に問題を発見し、適切な対応を行うことで、労働者が安心して働ける環境を整えることができます。
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